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最後の一年の混乱④

11月に入っても驚くほど暑い日が続いており、関西方面は日本シリーズの影響でさらに熱い状態になっておりますがみなさまいかがお過ごしでしょうか。今月もコラムにお立ち寄りくださりありがとうございます。

さて、博士課程も最後のセメスターとなり、論文執筆や就職活動にまぎれてコンチェルトのソリストをするというとても恵まれた機会をいただいていたので今回はそのことについて少し触れたいと思います。

今年8月のコラム(https://eigodepiano.com/chaos-of-the-last-year/)で書きましたが、私はラヴェルのト長調のコンチェルトでFSU(Florida State University)の大学院生オーケストラと共演させてもらうことになっていました。

修士課程に在籍中だった時はチャイコフスキーのコンチェルトが人生初の挑戦だったので(しかも40分近くかかる曲だったので)大変でしたが、今回のラヴェルは23分ぐらいだし数年前にオーケストラパートをピアノで弾いてもらって人前で弾いた経験があったので、曲に慣れるよりもどのように仕上げていくかが一番の課題でした。

この曲は管楽器にとても速いパッセージが出てくるので、各パートの第一奏者はかなりびびっていたようでした。本番が近づいてくると何人かの管楽器のトップ奏者に、「メトロノームどのくらいの速さで弾くのか教えて欲しい」と訊かれました。みんな自分のソロのパッセージを必死で練習してくれているんだとわかり、うれしいのと同時に「大丈夫かな?」という不安もあったのでした。

日本からは両親と妹と親戚の総勢7人が聞きに来てくれることになっていました。ツアーでもない上に誰も英語で話せないので、タラハシーの空港に迎えにいくのも私、ホテルの予約も私がしなければなりませんでしたが、私はオーケストラとのリハーサルもあるし本番まで家族や親戚とワイワイやってる場合ではありませんでした。そこで、ありがたいことにDr.  Bridger門下のミミさんをはじめFSUにいた日本人の友達が手分けして本番までの時間を過ごすのに車を出してくれたりして付き合ってくれました。

当日のヘアメイクは当時私が伴奏していた声楽科の友達に頼みました。ご丁寧に前もってヘアメイクのリハーサルまでしてくれました。そして出来上がったのはちょっと自分ではできない濃い〜メイクでしたが、オペラをする彼女たちはこれぐらい平気だったのだろうと思います。それがこちらです。Dr. Bridgerのお家で開いていただいた打ち上げでの写真です。

またこの当時、演奏の記録はCDと自分の「デジタルカセットタイプのビデオカメラ」しかなかったのですが、この演奏会の時にはDVDに録画してもらうように業者さんに頼みました。冒頭の写真はそのビデオを一時停止して切り取った写真です。今見返すと驚くほど画質が荒いのですが(汗)、とにかくDVDというメディアに残せたのは幸いでした。

このように多くの人の手を借りて準備してきた今回のコンチェルト、仕上がりは結構良いはずだったのです。ところが、本番の一音目でまさかのハプニングが・・・。

打楽器パートの鞭(むち)を打つ人が1拍フライングで入ったのです!!この曲は2分の2拍子で1拍目が全員休み、2拍目にいくつかの楽器とピアノが始まるのですが一番目立つむちの人が1人だけ飛び出して始まってしまったのでドキッとしてしまいました。曲のことをよく知っている人でなければ気づかないかもしれませんが、本当にびっくりでした。

その点について、元々打楽器奏者だった指揮者のDr. Jimenezは「本当に申し訳なかった!!」と終わってからしきりに謝ってくださいましたが、それ以外大きなハプニングはなく最後まで楽しく弾くことができて幸せな時間を過ごさせていただきました。今回はその危なっかしい出だしを含む、コンチェルトの1楽章を公開しちゃいます(笑)。

本番が終わってからおそらく1日か2日は聞きにきてくれた家族や親戚と過ごしました。こちらの写真は父と妹が映っていませんが親戚と撮ったものです(一番右が私)。この中には「せっかくフロリダまで来たのだから」と言ってフロリダ半島の南端、キーウェストまで足を伸ばして観光を楽しんで帰った人もいたのですが、私はその次の週には大事な就職のための最終審査があったので(詳しくは先月のコラムhttps://eigodepiano.com/the-last-year-3/ をご覧ください)、みんなを見送ってまた審査のための準備や論文の仕上げに追われることになりました。

いよいよ残すは論文の完成と卒業式(修了式)のみ!のはずでしたが、そこはなぜかやはり簡単にはいかないものでして、なかなかドクターを手にすることができず焦る日々でした。次回は論文の最終段階での出来事について書きたいと思います。次回もお楽しみに!

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