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アメリカのショパン教育現場から見えること



Teaching Chopin in America-A Focus on Expression , Not Perfection

Hello 英語でピアノ!

前回は、日本とアメリカにおける「ショパン熱の温度差」について書きましたが、今回はその続編として、アメリカのショパン教育の現場についてお話ししたいと思います。

私がアメリカで指導していた頃、特に印象に残っているのは、ショパンの作品を “技術の完成” よりも “感情の探求” のための音楽 として扱っていたことです。

たとえば、エチュードも「指の訓練曲」としてではなく、
 音色・呼吸・フレーズの方向性 を考えるための教材として使われていました。
 テンポがゆっくりでも、生徒が「自分の心の動き」を音で表現できることを何より大切にしていたのです。

ある大学教授が言っていた言葉が今でも忘れられません。

“Chopin is not about perfect notes. It’s about perfect honesty.”
 (ショパンは完璧な音を求める音楽ではなく、完璧な誠実さを求める音楽だ)

この言葉は、今の私の指導の中でも大切な指針になっています。

生徒がショパンを弾くとき、間違いを恐れず、自分の感じたままに音を紡いでほしい。
 アメリカが多様な文化や価値観が共存する社会であることを考えると、「音楽表現も個性を尊重する」という姿勢は自然な流れなのかもしれません。

アメリカのショパン教育では、「個性を育てる」ことが重視されます。
 同じノクターンでも、生徒によってテンポもタッチもペダルも全く違っても構わない。
 先生は「どちらが正しい?」ではなく、
 「どうしてそう感じたの?」
 と問いかけ、生徒自身に音楽的な選択の意味を考えさせます。

この点は、日本の「模範的に仕上げる教育」と対照的かもしれません。
 もちろん、日本の丁寧さや繊細な音づくりは大変素晴らしいものですが、ショパンの音楽が求めるのは「完璧」よりも「真実」に近いように、私は感じています。
 とはいえ、これはあくまで私個人の経験に基づくもので、アメリカ全体を一括りにして語れるわけではありません。

しかし、文化が違っても、ショパンを通して学ぶ
 「人間的な表現力を育てる」
 という目的は、どこの国でも共通しているのかもしれません。

Dr. Dean Kramer について

写真の男性は、ショパン国際ピアノコンクールで入賞したことのある Dr. Dean Kramer 先生です。
 ホロヴィッツの最後の弟子であり、ルービンスタインのレッスンも受けたことがある方です。
 若い頃にアメリカ・ショパンコンクールで1位、国際コンクールの方は確か5位だったと聞いています。

ただ、非常に完璧主義で、自分にも生徒にもとにかく厳しいため、商業録音がほとんど残っていないのが惜しい、と彼に師事していたオレゴン大学の友人から聞きました。

写真で左側の女性は、Kramer先生の奥様です。

■ プロフィール
 https://en.wikipedia.org/wiki/Dean_Kramer

先日、MTNA(全米音楽指導者協会)のオレゴン支部(OMTA)の勉強会で、オレゴン大学のピアノ科教授をお招きして講座があり、その際に撮影した動画をシェアします。

テーマがドビュッシーの作品についてだったためショパンは聞けませんでしたが、間近で演奏を聴けてとても良い時間でした。

https://youtube.com/shorts/OJaHpLVljRg?si=tRbMgo0aKlLYm3g9
 https://youtube.com/shorts/2NtvxnyE7f0?si=ljsAS3_xzg0m7pHr

その後、オレゴン大学ピアノ科で博士号を取った友人とランチに行ったところ、偶然またご夫妻に出会い、友人は少し緊張していました。
 改めて、「音楽家は演奏だけで語り尽くせる存在ではない」と感じた出来事でした。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

Best regards,
 Yumie

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