Happy Valentine's Day ! 〜宴の後〜
北の国から、Happy Valentine’s Day!
このコラムが掲載される今日はちょうどバレンタインデーですね。ドキドキワクワクいろんなストーリーが繰り広げられる楽しい1日ですね!世界中の美味しいチョコが手に入る日本がチョコレート大好きな私には羨ましいです。今も昔も、花より団子。笑

そんな甘い夢を見ながらテレビの中ではミラノオリンピックもたけなわ。寒いのが苦手でたくさん着込んで運動するのが苦手な私は、いつも競技の種類の多さに驚きます。
生徒さんの中にはホッケーやフィギュアスケートを習ってる人もいるので、捕まえてはいろんな話を聞いてます。なんせあのツルツル滑る氷の上をどうやったら後ろ向きに滑れるのか不思議で仕方なくって尋ねてみたところ、実戦付きで教えてくれました。
で、Conclusion (結論); まっすぐにまともに滑れない私には、ウルトラ級。
スポーツってやっぱり子供の時にやるべきものね。そうすると自然に体に馴染む。そう言う点ではピアノも同じですね。子供の頃に始める利点は多分これ、自然に弾きやすい奏法が身につく。子供って大人より体の感覚が鋭いから、「楽に」できる方法を学ぶのが早い。
反対に大人になってから長年身に染みついた習慣を変えるのはとっても大変。体の感覚が鈍くなってしまったと言うより、使わなくなったから眠ってしまってると言う方が近いかなと思います。そして大人は常に「考え」ながら生きなきゃいけないから、その考え方の習慣を変えるのが、これまた難しい。
そしてそれより難しいのは体と心(思考)を一緒に協力させることを思い出すこと。変化が早く起こる人は、これに抵抗なく向かっていける人だなって、ここ最近の自分の学びを振り返りながら思います。
特に何かが今までとは180度ひっくり返るような時、普段と違うと言う防衛本能が働くからね、それを解決するのは結構大変。人間は危機だと思うことに対抗しようとするからね。そこをどう解決するか?これはもう一人一人違うから、やりながら方法を探して行くしかないのだと思います。型はないのよ、パターンは作れても。

そんな行程をそれぞれ辿って「自分の望む演奏」を目指している仲間のピアニスト達を招いて今回のイベントの大トリを飾るコンサートが実現しました。
遡って4月にこのコンサート企画が持ち上がった時は、参加希望が少なくて、コンサートが久しぶりでレパートリーがない私は正直焦りました。でも蓋を開けてみると日本から5人そして私を含めた6人でのジョイントコンサートになりました。長丁場です。
日本からみんなが到着したのが水曜日。コンサートは土曜日です。
10月末まで日本とカナダは13時間の時差があって、日本が進んでいます。つまり昼夜がくるっとひっくり返る感じです。コンサート開演時間は夜の8時なので日本なら朝9時で、その点は心配してませんでした。問題は夜寝る時間をどう確保するか。
フランスに留学してた頃日本でコンサートをした時のことです。学校が始まっていたこともあって長期の帰国はできず、かなりきつい日程でこなして時差でボロボロになった経験があるので、今回それを心配していました。
でももちろんみんな仕事も家庭もあって、1週間前に現地入りなんて贅沢はできない!ということで当日の3日目に到着。
その夜みなさんをグレン・グールド・スステュディオ(以下GGS)に案内しました。なぜかと言うと翌日の午後ホールでリハーサルが予定されてて、私は昼までワークショップがあったからなのです。場所は同じダウンタウンですが昼間は渋滞がひどく、それだけでなく実はこの週末は色々なスポーツイベントが重なってしまって、町中が観客客で溢れてとんでもないことになってしまっていたのです!
カナダ唯一のMBAバスケットボールチームのラプターズと泣く子も黙るホッケーのトロント・メイプルリーフのシーズン開幕戦と、こともあろうかメジャー・リーグのワールド・シリーズに○十年ぶりに出場することになったトロント・ブルー・ジェイズのワールドシリーズ開幕戦、が重なってまさにカオス。
このホールを下見した時に日程を聞かれて、冗談で言ってたことが実現してしまって驚いたのなんのって!

と言うわけで私も佳美先生も山内先生もいなくても大丈夫なように、長旅の後のみんなを取り合えずホールへ案内したと言うわけなのです。
今考えるとなんと無茶な!と我ながら思います。ほぼ丸一日がかりでやってきた人達を言葉もおぼつかない右も左も分からない異国で、明日はご自分でホールへ行ってリハーサルを始めているください、ですから!みんなには感謝しかありません!
そんなリハを無事終えて、問題はどこで練習するか?
日本はいっぱい練習できる貸しスタジオがありますよね。
ここにはそれがない!唯一見つけたところも、ピアノのある部屋は一部屋だけ。もう一件見つけた楽器屋さんは、ピアノはあるんだけどそれがとんでもない代物で…それをみんなで予約してUber使って移動して、となんとかこなしてくれました。
もうてんやわんやです。
講師としてお招きした佳美先生は、ワークショップが終わった途端今度はみんなのレッスンで、レストランに座って食事ができたのはワークショップ1日目のお昼だけと言うあり様。まさに耐久戦でした。
音楽家は体力が勝負。笑
そんな忙しない日々もあっという間に過ぎてあっという間に迎えた本番。前述した通り、街はカオスです。ジェイズのユニフォームを着た人で通りはいっぱい。しかもこともあろうことか、球場はGGSの目の前。あちこちで通行止めは始まっていましたが、あまりに人の流入が多過ぎて郊外からの交通機関まで閉鎖。もちろん高速の出口も閉鎖。
前もって早めに出発くださるようにお客様には連絡していましたが、結局10人くらいの方達が来れませんでした。残念なことです!
そんな外の騒ぎとは裏腹にコンサートは静かに始まりました。
一人一人曲を紹介して弾くスタイルで、プログラムには日本の作曲家も含まれていて、バラエティに富んだ素敵な会になりました。
みんながそれぞれここに至るまでの道程は来てくださった方みんなの心に響いていたようでした。
私たちは今社会の大きな転換期にいると思います。今までの価値観がどんどん覆されていく中、比較され評価され、ジャッジされるだけの教育法では本当に芯から強く創造性に溢れた人材は育たないと思います。子供は導きが必要だけど、それがあれば自分の感覚を頼りに自力で進んでいくことができます。それを過剰にコントロールすることでできてしまう壁を見つめ、それを取り除く決意をして、取り除き、新しく自分で道を敷き、そこを歩き始めた、その過程の一つがこのコンサートでした。
今年は4月に福岡、7月に東京、そして11月にまた福岡の予定で、みんながみんな自分のやり方で一歩一歩進んでいます。私にとって大きな一里塚になった今回のイベントを経て、芸術は高尚な置物ではなく私たちが人間らしく生くための道標のようなものなのだと最近しみじみ思います。
型にはめるのではなく型を取り除いて自然に戻る。
これはピアノテクニックも一緒です。
そんな体験をレッスンを通じて知って欲しいなと思いつつ、私も次に向かって進んでいます。
長いコンサートシリーズにお付き合いくださってありがとうございます。
それではまた来月お会いしましょう!
