アメリカのテキストに見られるジャズ的要素 ③Blues
先日、こちらのサイトで新しい動画レッスンが始まりました。
もう見て頂けたかと思いますが、ナブ子先生とかつみ先生のLet’s Sing Jazz from NYです。その第1回目が「カエルの歌ブルース」でした。
日本語と英語で、鳴き方も違って、コール&レスポンスも入って、楽しい動画でしたね。
あのカエルのぬいぐるみはナブ子先生の自前のものだったそうです!
ブルースという言葉は日本でもよく使われているし、知ってはいましたが、小節数やコード進行が決まっているというのは、私はジャズピアノを習って初めてきちんと知りました。
そして、有名なライブ・ハウスの名前になっているBlue Noteというのが、ブルーススケールで使われる3度、5度、7度のフラットの音ということも、ほんの数年前まで知りませんでした。
動画でナブ子先生が紹介してくださいましたが、ブルースは元々は奴隷として連れて来られた黒人たちが歌った憂いを帯びた歌、3、5、7度を半音下げることで、少しもの悲しい雰囲気になり、それが「ブルーな音符」ということでBlue Noteだったのですね。
でもブルースはブルーノートだけでなく、長3度も完全5度も使うので、ただ単にマイナーな暗い感じではなく、ナブ子先生もおっしゃっていましたが、マイナーとメイジャーが混ざったような雰囲気になります。
そして大きな特徴は長7度ではなく短7度が多用されることで、ミクソリディアン・スケールが基本にあるということでしょう。
JacobはミクソリディアンのもつイメージをBlueと言っていました。
ブルースにも種類があって、コード進行も変化するのですが、子ども向けのピアノテキストで扱われているブルースは、最もシンプルなトラディショナル・ブルースと言われるものがほとんどです。
ちなみに12小節からなるので、12(Twelve) Bars Bluesと言われます。数字は度数で括弧内はKey Cの場合のコード進行です。
|1(C7) |1(C7) |1(C7)|1(C7) |
|4(F7) |4(F7) |1(C7)|1(C7) |
|5(G7) |4(F7) |1(C7)|1(C7) |
私はJacobにジャズピアノを習い始めた時、最初にやったのがFブルースでした。
ジャズブルースはちょっとまた進行が違うのですが、基本は同じです。
最初は、まず12小節というのが、体に入りづらく、特にソロ(Improvisation)
のときなどはロストしてしまう(どこをやっているかわからなくなること)こともありました。
以前にピアノの先生のための即興講座をやった時も、やはり12小節に馴染めないという声がありました。8×2で16小節の方がしっくりくると。
それともう一つ違和感があったのは、3段目の5→4、クラシックで考えたら、「え?逆じゃない?1-4-5-1じゃないの?って思いますよね。
そして曲の最後がセブンスコードで終わる、「え?終わっていいの?続く感じしない?」みたいな(笑)。
日本ではあまりこのブルースの形の歌が特に子ども向けの曲では見かけませんが、アメリカでは馴染みのある音楽なのだと思います。
ではテキストで見てみると、My First Piano Adventures Book Bの「Octave Blues」
こちらがブルース基本そのものですね。
しかも基本の基本、ルートの音だけてやっているので、ブルースの骨組みがよくわかります。その上、この曲の歌には”Move to F”とか”Back to C」という掛け声も入っているので、ただ音符を追いかけるのではなく、ブルースの進行にしたがって曲がどのように進行するかを自然と感じられるようにできていると思います。
生徒が弾くのはCFGの3つですが、先生の伴奏にはブルー・ノートがたくさん使われていて、最後はセブンスの和音で終わっています。
ワルツの曲のタイトルに一々ワルツとついていないように、ブルースと書いていなくてもブルース進行の曲はたくさんあります。
アドベンチャーやPiano BOPにも入っているので、探して見てください。「あ、これブルースだ!」とわかるとちょっと嬉しいです。
またブルース進行ではないけど、ブルース・スケールやミクソリディアン・スケールをベースとした、ブルージーな曲も多く含まれています。
MFPA Book Cより「Bedtime Boogie Woogie」
以前に米国ピアノ・ギルド検定で、この曲を弾きたいと生徒が言いました。この検定では、選曲は自由なのですが、その曲の調のスケールとケーデンス(ビギナーレベルでは1−5−1)を弾くことが必須です。
楽譜をお持ちの方は、ぜひ出して眺めて見てください。
何のスケールを弾かせますか?
以前の私なら、特に何も考えずGメジャー・スケールを弾かせていたと思います。
でも、この曲のメロディーに出てくるFの音は全てナチュラルのFです。しかも最後の音もFで終わっています。Gスケールを弾くとFは#にするので、とても違和感を感じるようになりました。そこで、ギルド検定事務局の山田里紗先生に問い合わせたところ、「先生がどういう意図でそのスケールを弾かせるかが伝われば良いです」と言ってくださったので、楽譜にG Mixolydian Scaleと目立つように書いておいて(Gメジャーの#を落としてる訳ではないですとわかるように)生徒にはGミクソリディアンスケールを教えて弾かせました。先生の伴奏をみると11小節目でドミナントのD7が出てきますので、ケーデンスはGDG(1−5−1)にしました。余談ですが、この曲は9小節目から4→5となっていて、ブルースの5→4ではないのですね。
同じように、前回紹介した「Leap For Pinata」を弾いた時も、E Phrygianと書いてフリジアンスケールを弾かせました。ケーデンスはEm B7 Emです。
このようにして、小さな頃から色々なスケール(モード)の音楽に触れておくことは、とても良い音楽経験になるのではないかと思います。
私はずっと古典派中心のピアノレッスンで育ったので、現代モノやジャズをやり始めた時、「何だかかっこいい!」とは思うものの、なかなか体がついてこない部分がありました。今でもまだ馴染めていない部分も多いです。
なので、生徒たちには、モードのようなメジャー・マイナー以外のスケール、ホールトーン・スケールやクロマティック・スケール、少し大きくなったらディミニッシュ・スケールなどにも触れさえてあげておくと、色々なジャンルの曲を抵抗なく弾けるようになるし、将来難しいクラシック曲を弾く時にも役立つと思っています。
私もまだまだ勉強中で、間違っていたり、おかしな解釈をしているかもしれません。
何かあれば遠慮なくコメント欄にお書きください。
