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インフルエンサーとしての先生と、クリエイターとしての先生 (どなたでも閲覧できます。)

こんにちは、ファーグソンかつみです。2020年、明けましておめでとうございます!

今回は、自身がピアノを教え始めた16歳の頃からずっと考え続けてきたトピックをあげてみます。

「教える仕事って、どこまで先生のcreativeさを求められるんだろう?自分は、教える仕事を行うことで、いち音楽家としてどの程度クリエイティヴで居られるのだろう?」ということ。

世の中には数々のメソッドや教則本があって、それを選びながらつ使い方を研究したりして指導される先生方がほとんどだと存じます。一方で、どれだけ既存のメソッドと重なる内容を含んであっても、自身のオリジナリティを加えた教則本を発信することでご自身のオリジナルメソッドを構築することにとてもご熱心な教育者もいらっしゃいます。

オリジナリティ溢れた演奏活動をしている演奏家でも、後進の方々に教える場面となると、意外にもオーソドックスな内容に終始する場合もあるし、特に演奏活動でオリジナリティを出しているわけでなく、生徒さんを指導する際に、今までになかったものを自分の代わりに生徒さんが表現することを促すことにご熱心な先生もいらっしゃいます。

私自身は、どのような方向性でこのお仕事をしているだろうか?と、度々振り返りながら考えています。どんなスタンスの指導法が素晴らしいか、優れているか、ということを考えようとするお話ではありません。節目ごとの振り返りのお話と、膨れ上がったスタンスの数々の選択肢の中で自分がある日気づかずに道に迷わないようにする作業を、同じくピアノや器楽を教えていらっしゃる先生方や、親御さんたちとシェアしようとしています。

そこでキーワードとして最近よく思い浮かべるのがこの二つ、「インフルエンサーとしての先生か、またはクリエイターとしての先生か、それともどちらも?」

読者の先生方は、ご自身をどちらのタイプだとご認識されているでしょうか?

私の主観によるところが大きいことは百も承知でその違いを書いてみますと、例えばこういう風に先生たちの振る舞い方が異なってくると思います。

*インフルエンサーとしての先生

まず、自分が教わった先生や、尊敬する教育者から得た情報を基にして生徒さんに伝えようとするので、そういった方々からこう教わった、という話をよくなさったり、引き継いだ指導法を大切にしていこうとする先生。

ご自身には、いかに表現者・クリエイターとして他とは違う存在でありたいか、という強い気持ちは無い代わりに、教わったことや敬意をもっていることを次世代にも伝えようとすることで、自身も同じくそれらの影響を残していくという存在を目指す。レッスンの回数にも、比較的しっかりコミットする方が多いのも、このタイプだと存じます。

*クリエイターとしての先生

普段から、どちらかと言うとご自身の演奏活動や表現活動のほうを時間的には優先されている。師事した先生からの情報や教え方には時として否定的だったり、音楽レッスンをあまり受講した経験の無い先生方もこの中には存在する。新しい教材ややり方を試すことに熱心で、生涯に於いてご自身独自のメソッドを構築しようとする先生。

そうして構築された指導法に生徒さんが添うことを強く願う先生もいれば、ご自身の表現活動のほうに大半のエネルギーを使うため、生徒さんにコミットするレッスンの回数自体がとても少ない先生も。それでも、とても人気のある先生もいらっしゃいますよね。

・・こうやって書いていても、どちらのスタンスも指導者側にとっては大切なことのように思えてならないのですが(指導者として以前の、まず『音楽・芸術をする者』として)、どちらものスタンスを両立させることはとても難しくて、私たちはしばしば振り返ってはどちらかに傾いたり、ふと立ち止まって考えてしまったりするもの。

生徒さんにとって、インフルエンサーとしての先生からのレッスンを受けることの良いところは、何かと引き継ぐものへの信念が強いことで、演奏したいジャンルの決まっている方々にとって、その目的のための安定感を得られるところだと思います。知識的にもそういった先生はひとつのジャンルに関し、コアだったりします。専門的には濃いレッスンを受けることができるでしょう。

クリエイターとしての先生の良いところは、親御さんも生徒さんも、先生のその開拓精神によって、いつも受け身ではなく生徒さんも自身にとってよりフィットするレッスンについて考える習慣を得られるところでしょうか。色々と新しいものを試そうとする先生の振る舞いは飽きませんし、時には古きものを壊していくような指導法によって、大きな開眼をさせてくださる先生もいることでしょう。中には演奏活動や表現者としての活動をバリバリされている先生のことを、生徒さんや親御さんは、アイドル的に誇らしく思うこともできるでしょう。

読者の先生方はきっと、長い年月の間にどちらのタイプの先生からのレッスンも経験していることでしょう。

私自身もそうです。どちらも大変有意義でしたので、甲乙つけがたいというか、賛否両論などを行う気はありません。ただ、お互いにこれらのどちらのスタンスの先生に習っているのか、先生自身は、どちらのスタンスに現在居るのかという自覚と理解と、生徒さんたちがそれに納得していること(不本意では無いこと)で、お互いの誤解や不安は随分と減りますよね。

新年早々、考えていたことを今回は書いてみました。お読みくださり、ありがとうございます。

写真は、オフ・ブロードウェイ ミュージカルシアターの俳優さんたちと。

ファーグソン かつみ

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