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人は、知っていることに新しいことをつなげて学ぶ

・前はできたのに、できなくなってる!
・さっきやったことを、もう忘れてる!
・何度も説明しているけど、分かってくれない
・基本はできるけど、ちょっと応用させるとできない…

これではせっかく工夫を凝らしたレッスンを行っても、
ただの楽しい思い出に終わり、
「学び」となっていないことがあります。

なぜ、こんなに頑張って指導しているのに
身につかないのでしょうか?

もちろん練習不足もあるでしょうが、
その練習不足の原因も「学び方」にあるかもしれません。

というのも、タイトルの通り
一般的な人は「新しいことを学ぶ時は、既知(すでに知っていること)と結びつけながら理解する。だから一度に多くのことを言われても理解できない」」とされています。

なので1つの概念を変奏や即興で扱えるくらい
しっかりと身に着けることが必要なのです。

皆さんも新しいアプリの使い方を聞いても
チンプンカンプンだったりしませんか?

私は、いつもそうです。
せっかく使い方を教えてもらったのに、
忘れてることも多く結局使ってないアプリもあります。

でも使い慣れたアプリのバージョンアップ程度なら
「新しいボタンが増えてる!
(前のバージョンとの見た目の違いを認識)

どうなるんだ?(実際に操作した結果を認識)」
など何とかついていけます。

また似たようなアプリでも
「このボタンはあのアプリ(他の似たようなアプリ)の、
あの機能になるのか…(前に学習したことと結びつける)」
など応用ができるのでまだ理解が早いです。

でも新しいアプリを覚える時に、
「よく分からないけど、赤押して、次に青押して、
次に黄色ボタン押したらできる」など

それぞれのボタンの仕組みを理解せずに覚えていたら、
他の似たようなアプリでの応用は難しいかもしれません。

このように
人の知識は前に学んだことに新しいことを関連付けながら、
または意味付けながら獲得して行きます。

ピアノレッスンも同じ。
例えば、初めてのレッスンで
「ド」だけの簡単なメロディーを弾かせる場合、
昔の私は「ドしかないし、簡単でしょ?」と思っていました。

でもこれを、きちんと理解して弾くには、
・音には高さと長さがある
・黒丸や棒なしによって音の長さが変わる
・楽譜のタテ軸は音の高さ、ヨコ軸には時間の流れを表している
・同じ音が続いている
・真ん中ド
・鍵盤の場所
・どの指で弾くのか?

などザッと挙げただけでもこれだけあります。

これって
音楽や楽譜に対する前提知識が
あまりない大人の方でも意外と難しいです。

おそらくあまり仕組みを理解せずに弾くので、
「暗記型譜読み」になります。

なので小さなお子さんが弾けたとしても、
「理解して弾いているわけではないかも。
丸暗記しているだけかも」
を認識していないと、ちょっと危険な感じもします。

なので指導する時には、
生徒さんの中に
【すでに学んだことを行いながら、新しいことができるか?】
を構築して行かないと、

冒頭の話のように
「前にやったのにできなくなってる!」
「さっきやったのに忘れてる!」となりがちです。

また、生徒さんにとっても
「いろいろ気を付けてるけど、
〇〇ができたら△△ができない。
△△ができたら〇〇ができない…」となりがち。

そもそもあれこれ意識しないといけないのは、
・メロディーが歌えていなかったり…
・メロディーを支えているハーモニーが脳内で鳴っていなかったり…
・それらのメロディーやハーモニーに指の動きが連動していない…
などが多いです。

複数概念の連携はもちろん、
概念自体の習得も怪しい状態…

結局はアメリカ特有の概念指導の恩恵を
受けていないことになります。

ではどうしたら、
新しいことに既知を結び付けられるでしょうか?

私が行っているのは、
以前にもお話しした通り、

1つの概念を①耳・感覚 ②テクニック ③理論 の3方向からアプローチし、
変奏や即興ができるか?を確かめます。 

ほかにも
●ルーテーン化:音符、リズム、音感、音列、パターン読みなど1つの概念を習得するまでに時間がかかるものは毎回のレッスンの初めにルーティーンとして行う

●活動内容や目的を提示:「今日は〇〇をやりたいでーす♪」「今から、前にやったこのリズムを使ってドレミの鍵盤が弾けるかな?をやりたいでーす♪」など、今日の活動内容やねらいを伝える

●振り返り:レッスン終了時に「今日は何したっけ?」「どんな発見があった?」など振り返ることで、脳内を整理

などです。

特に、今日の活動内容やねらいは
年中さんあたりから少し伝えておくだけで
「これが大事なんだな…」と意識して活動することが多くなるのでオススメです。

というように、
・人は一度にたくさんのことは理解できない
・新しいことは、知っていることに結び付ける

を知っておくと有意義なレッスンになるだろうし、
生徒さんにとっては、知識が構築されてくるので
練習も行いやすいのでは?と思います。

お役に立てれば嬉しいです。

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さて、長らくご愛好いただいたコラムでしたが、
諸事情によりこの度9月で終了となります。
ありがとうございました。

引き続き、アメリカ指導法や発達心理学、教育心理学については研究を重ねて行きます。
(実はこの春より大学の通信で学んでいます)
今後も、学んだことやレッスンの様子は私のブログやTwitterなどで発信していきますので、こちらもどうぞよろしくお願いします。

小崎未樹子(おざきみきこ)
ブログ:https://ozaki-lesson.com/    
Twitter:@ozakipiano88   

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