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アメリカのテキストに見られるジャズ的要素④リディアン

今日もモードのお話です。

以前に合同の発表会で、「カエルの歌」を間違えてF(ファ)から弾き始めた子がいました。C(ド)から弾いているつもりだから当然全て白鍵を弾きます。

「ファソラシラソファ ラシドレドシラ」

慌てて担当の先生がステージへ行き、Cポジションに戻して

「ドレミファミレド」になりました。

その当時まだ私はモードの知識がなかったので、「あらあ、間違えちゃったね。」と思っただけでしたが、もし今なら「おっ、リディアンのカエルさんね!ゆらゆら泳いでる感じでそれもいいんじゃない?😄」と思えるのです。

リディアンというのはメジャースケールの第4モード、Cメジャーで言えばFから始まる音階で、特徴的な音は4番目の音。

「ファソラシドレミファ」

シがナチュラルですので、フワっと浮き上がった感じがあります。

ジェイコブはリディアンのことを「Floating」とイメージすると言っていました。

では、ピアノアドベンチャーで見てみると、Fリディアンの曲は「FGAB」のポジションを練習する曲にでてきます。

MFPA BookAより

「Riding the  Escalator」

エスカレーターを上っていく浮き上がる感じ。

「Wish I were a fish」

海の中を魚になってゆらゆらと泳いでいる感じ。

確かにこのようにリディアンはフワっと浮遊感のある曲に合う感じがしますね。

リディアン旋法だけで書かれた曲というのはあまり見かけませんが、バルトークのミクロコスモスには何曲か出てきます。

タイトルに「リディア旋法で」と書かれていればわかりますが、そうでないものはモードの知識がないと「あれ?これ何?」と思うかもしれません。

例えば、ミクロコスモス第一巻24番「パストラール」

調号はシャープ3つなので普通に考えるとAメジャーまたはF#マイナーになりますが、弾いてみると何か不思議な感じ。そして曲の最後の音はD(レ)です。

つまりAメジャーの第4モードであるDリディアンということがわかります。

このようなことがわかると、分析力や曲の理解が高まるだけでなく、自分で作曲したりアレンジをするときに選択肢が広がると思うのです。

以前に、あるリトミックの試験で「その場で出される短いストーリーに即興で伴奏をつけなくてはいけないのだけど、どのようにしてよいか教えて欲しいと」私のレッスンを受けに来られた先生がいました。

はっきりとは覚えていませんが、ストーリーに出てくる「走る」「歩く」などよくあるリトミックの活動に「明るい気持ちで」とか「勇気を持って」などのニュアンスが加わっていて、それに音楽を付けるのですが、テストの条件に「調を変えること」というのがありました。

それで調を変えるだけでなく、モードを使ったり、全音階や半音階を使ったり、マイナーなら3度を抜いたパワーコードで力強さを出したり、と簡単に雰囲気を変えられるような即興をお伝えしたところ、その課題は一発合格だったそうです。

即興演奏というのは、本当に即興で音楽が降りてくる天才でない限りは、やはり知識に基づいて、そこから広げていくしかないと思うのです。

そのアプローチ方法は千差万別、色々なやり方がありますが、私はジャズピアノで習った色々なスケールの知識がとても役に立っていると感じています。

そして色々なスタイルを知ることで、許容範囲が広がり(ファから弾くカエルの歌も面白いし、ナブ子先生の動画のようなブルースのカエルの歌も楽しい!)、生徒たちが自由に弾くことを止めないで面白がって聴くことができるようになりました。

この前も生徒の1人がC5フィンガーの曲を色んな場所で弾いて遊んで「わ、暗っ。」とか「これいいね。」とか自分で言いながら面白がっていました。これって自らモードを体験しているということですよね!

リディアンの特徴音は主音から見た増4度、この音程はトライトーン(全音が3つ)と言われジャズではとてもよく出てくる音程です。

もう一つアドベンチャーの中でリディアンの流れで触れたい曲があるのですが、これはまた次回書きたいと思います。

リトミックなどにも使える即興・伴奏については、コラムで書くより実際に音を出しながらやったほうがわかりやすいと思うので、以前にジェイコブの教室で開いた即興・伴奏講座のようなことを、いずれ動画配信できたらと考えています。

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